ホーム » 事業再構築補助金 » 事業再構築補助金の第6回公募では何が変わる!?(第3回)ー最低賃金枠の継続ー

事業再構築補助金の第6回公募では何が変わる!?(第3回)ー最低賃金枠の継続ー

この記事では、事業再構築補助金の第6回公募における変更点のうち、引き続き継続される「最低賃金枠」を取り上げ、その内容や要件について解説しています。コロナ以降、現在に至るまで非常に厳しい状況にある事業者の方々にとっても活用しやすい申請類型の1つです。苦難の中にあっても賃金引上げを行う事業者の取組に役立てば幸いです。

 

事業再構築補助金全体の概要

事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新分野展開、事業・業種転換、事業再編またはこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的としています。

令和4年度には4回程度の公募が行われると予想されていますが、その初めである第6回公募からは、引き続き業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者への重点的支援を継続しつつ、売上高等減少要件の緩和などが行われています。その他、高い成長率を目指す「グリーン成長枠」を創設するなど、ポストコロナ社会を見据えた未来の社会を切り拓くための取組を重点的に支援する内容となっています。

 

 

全申請類型に共通する要件

今般、第6回公募で行われた「見直し」と「拡充」の結果、事業再構築補助金の補助対象となる申請類型は、「通常枠」、「大規模賃金引上枠」、「回復・再生応援枠」、「最低賃金枠」および「グリーン成長枠」の5つとなりました。

今回の記事では最低賃金枠について取り上げますが、まず、5つの全申請類型に共通する要件、すなわち「事業再構築要件」、「売上高減少要件」(「グリーン成長枠」を除く)、「認定支援機関要件」および「付加価値額要件」の内容を確認しておきましょう。

 

事業再構築要件

事業再構築要件とは、「事業再構築指針」に示されている「事業再構築」の定義に該当する事業であることです。具体的には、「新分野展開」、「事業転換」、「業種転換」、「業態転換」または「事業再編」のいずれかを行う計画に基づく中小企業等の事業活動に該当することが求められます。

 

売上高等減少要件

事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症をきっかけとした需要や売上の低迷に対応する支援の意味合いが強いことから、「グリーン成長枠」以外の申請類型には次の「売上高等減少要件」が求められています。

「2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1月〜3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること」

売上高等減少要件は、合計付加価値額の減少でも代替することができ、その内容は次の通りです(付加価値額とは、営業利益、人件費および減価償却費を足した額をいいます)。

「2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計付加価値額が、コロナ以前(2019年または2020年1月〜3月)の同3か月の合計付加価値額と比較して15%以上減少していること」

なお、売上高の減少、合計付加価値額の減少ともに、新型コロナウイルス感染症の影響によらないものは対象外となりますので注意しましょう。

認定支援機関要件

事業計画を認定経営革新等支援機関(金融機関、税理士等)と相談の上策定することが求められており、申請時に「認定経営革新等支援機関による確認書」を提出する必要があります。

 

付加価値額要件

補助事業終了後3〜5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、または従業員1人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定する必要があります。

 

 

最低賃金枠の概要

第6回公募から新設された最低賃金枠は次のような補助内容となっています。

項 目要 件
概要最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等の事業再構築を支援。
補助金額【従業員5人以下】 100万円〜500万円

【従業員6〜20人】 100万円〜1,000万円

【従業員21人以上】 100万円〜1,500万円

補助率中小企業者等  3/4

中堅企業等   2/3

補助事業

実施期間

交付決定日〜12か月以内(ただし、採択発表日から14か月後の日まで)
補助対象経費建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費

通常枠や大規模賃金引上枠との比較では補助上限金額は低いく設定されていますが、従業員が少ない場合でも活用でき、業況の厳しい中小企業等の中でも広く補助を活用する機会が提供されています。また、補助率も高く、例えば3/4の補助率であれば、250万円の自己負担で1,000万円規模の補助事業も可能になる、相当「お得な」割合です。

なお、最低賃金枠の申請類型で不採択となった場合は、申請者側で特段の手続きを行わなくとも通常枠で再審査されます。2度の採択チャンスという優遇が用意されているのです。

 

 

最低賃金枠特有の要件

最低賃金枠の補助要件では、全申請類型に共通する要件に加えて、以下の「最賃売上高等減少要件」および「最低賃金要件」が求められています。

最賃売上高等減少要件

以下の(ア)または(イ)のいずれかの要件を満たすこと

  • 2020年4月以降のいずれかの月の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少していること
  • (ア)を満たさない場合には、2020年4月以降のいずれかの月の付加価値額が対前年または前々年の同月比で45%以上減少していること

 

最低賃金要件

「最低賃金要件」としては、「2020年10月から2021年6月までの間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること」が求められます。

この要件につきましては、以下の点に留意する必要があります。

  • 「全従業員数」については、2020年10月から2021年6月までの間の対象月とする3か月の常勤従業員数が基準となります。
    (「常勤従業員」は中小企業基本法上の「常時使用する従業員」をいい、労働基準法20条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」と解されます。これには、「日々雇い入れられる者」、「2か月以内の期間を定めて使用される者」、「季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者」および「試みの使用期間中の者」は含まれません。
  • 要件を満たす従業員数については、小数点以下を繰り上げて算出します。
    (例)全従業員が25人の場合
    25人(全従業員数)×10%=2.5人
    ⇒要件を満たす従業員は3人である必要があります。
  • 事業場内最低賃金が最低賃金+30円以内であるかを確認するため、「賃金台帳」の提出が求められます。
  • 最低賃金額については、厚生労働省HPの地域別最低賃金額を参照しましょう。

 

 

要件に該当する場合は積極的な活用の検討を

ここまで事業再構築補助金の第6回公募でも継続されている最低賃金枠について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。

この申請類型は、2020年初頭に始まった新型コロナウイルス感染症の流行により業況が依然として低迷していながらも賃上げに取り組む事業者の生産性向上について、引き続き強力に支援するためのものです。

要件に該当する場合には、このチャンスの機会に積極的な活用を検討し、事業再構築の断行による事業生産性の向上に挑戦してみてはいかがでしょうか。

関連記事