ホーム » 事業再構築補助金 » 事業再構築補助金の第6回公募では何が変わる!?(第4回)ー大規模賃金引上枠の継続ー

事業再構築補助金の第6回公募では何が変わる!?(第4回)ー大規模賃金引上枠の継続ー

この記事では、事業再構築補助金の第6回公募における変更点のうち、引き続き継続される「大規模賃金引上枠」を取り上げ、その内容や要件について解説します。大規模賃金引上枠は、コロナ以降の需要縮小が続く中でも、働く人々への分配を強化する事業者に対する強力な支援内容となっています。そんな事業者の方々の検討に役立てば幸いです。

 

 

事業再構築補助金全体の概要

事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新分野展開、事業・業種転換、事業再編またはこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的としています。

令和4年度には4回程度の公募が行われると予想されていますが、その初めである第6回公募からは、引き続き業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者への重点的支援を継続しつつ、売上高等減少要件の緩和などが行われています。その他、高い成長率を目指す「グリーン成長枠」を創設するなど、ポストコロナ社会を見据えた未来の社会を切り拓くための取組を重点的に支援する内容となっています。

 

 

全申請類型に共通する要件

今般、第6回公募で行われた「見直し」と「拡充」の結果、事業再構築補助金の補助対象となる申請類型は、「通常枠」、「大規模賃金引上枠」、「回復・再生応援枠」、「最低賃金枠」および「グリーン成長枠」の5つとなりました。

今回の記事では大規模賃金引上枠について取り上げますが、まず、5つの全申請類型に共通する要件、すなわち「事業再構築要件」、「売上高減少要件」(「グリーン成長枠」を除く)、「認定支援機関要件」および「付加価値額要件」の内容を確認しておきましょう。

 

事業再構築要件

事業再構築要件とは、「事業再構築指針」に示されている「事業再構築」の定義に該当する事業であることです。具体的には、「新分野展開」、「事業転換」、「業種転換」、「業態転換」または「事業再編」を行う計画に基づく中小企業等の事業に該当することが求められます。

 

売上高等減少要件

事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症をきっかけとした需要や売上の低迷に対応する支援の意味合いが強いことから、「グリーン成長枠」以外の申請類型には次の「売上高等減少要件」が求められています。

「2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1月〜3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること」

売上高等減少要件は、合計付加価値額の減少でも代替することができ、その内容は次の通りです(付加価値額とは、営業利益、人件費および減価償却費を足した額をいいます)。

「2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計付加価値額が、コロナ以前(2019年または2020年1月〜3月)の同3か月の合計付加価値額と比較して15%以上減少していること」

なお、売上高の減少、合計付加価値額の減少ともに、新型コロナウイルス感染症の影響によらないものは対象外となりますので注意しましょう。

 

認定支援機関要件

事業計画を認定経営革新等支援機関(金融機関、税理士等)と相談の上策定しなければなりません。補助金額が3,000万円を超える大規模賃金引上枠の事業計画にあっては、金融機関および認定経営革新等支援機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみでも可)と共同で策定する必要があります。

また、申請時の添付書類として「認定経営革新等支援機関による確認書」および「金融機関による確認書」の提出が必要ですが、金融機関が認定経営革新等支援機関を兼ねている場合は、「金融機関による確認書」の提出を省略できます。

 

付加価値額要件

補助事業終了後3〜5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、または従業員1人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加を見込む事業計画を策定する必要があります。

 

 

大規模賃金引上枠の概要

大規模賃金引上枠は次のような補助内容となっています。

項 目要 件
概要多くの従業員を雇用しながら、継続的な賃金引上げに取り組むとともに、従業員を増やして生産性を向上させる中小企業等の事業再構築を支援。
補助金額【従業員101人以上】 8,000万円超〜1億円
補助率中小企業者等  2/3(補助金額が6,000万円を超える部分は1/2)

中堅企業等   1/2(補助金額が4,000万円を超える部分は1/3)

補助事業

実施期間

交付決定日〜12か月以内(ただし、採択発表日から14か月後の日まで)
補助対象経費建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費

従業員が多い場合に限定されてはいるものの、大規模賃金引上枠では他の申請類型に比べて補助金額が非常に高額に設定されています。ここには「『人』への投資の強化」の観点から、最低賃金引上げを含めた賃上げの原資となる付加価値を創出する事業再構築や生産性向上に取り組む中小企業に対して、賃上げの促進を考慮して強力な助成支援を行う政府の姿勢が見て取れます。

なお、大規模賃金引上枠の申請類型で不採択となった場合は、申請者側で特段の手続きを行わなくとも通常枠で再審査されます。

 

 

大規模賃金引上枠特有の要件

大規模賃金引上枠の補助要件では、全申請類型に共通する要件に加えて、以下の「賃金引上要件」および「従業員増員要件」が求められています。

 

賃金引上要件

賃金引上要件としては、補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度から3〜5年の事業計画期間終了までの間、事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げることが求められます。

この要件については、以下の点に留意する必要があります。

  • 補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度の前年度の終了月の事業場内最低賃金が基準となります。ただし、その賃金が申請時点の事業場内最低賃金を下回る場合には、申請時点の事業場内最低賃金が基準となります。
  • 申請時点で、申請要件を満たす賃金引上げ計画を従業員等に表明する必要があります。表明していないことが補助金の交付後に発覚した場合は、補助金額の返還を求められます。
  • 予見できない大きな事業環境の変化に直面するなどの正当な理由なく、事業計画期間終了時点において、事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げることができなかった場合、通常枠の従業員規模ごとの補助上限額との差額分について補助金を返還する必要があります。

従業員増員要件

従業員増員要件としては、補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度から3〜5年の事業計画終了までの間、従業員数を年率平均1.5%以上(初年度は1.0%以上)増員させることが求められます。

この要件については、以下の点に留意する必要があります。

  • 補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度の前年度の終了時点の常勤従業員数が基準となります。ただし、その人数が申請時点の常勤従業員数を下回る場合には、申請時点の常勤従業員数が基準となります。
    (「常勤従業員」は中小企業基本法上の「常時使用する従業員」をいい、労働基準法20条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」と解されます。これには、「日々雇い入れられる者」、「2か月以内の期間を定めて使用される者」、「季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者」および「試みの使用期間中の者」は含まれません。)
  • 増員する必要がある従業員数については、小数点以下を繰り上げて算出します。
    (例)補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度の前年度の終了時点で従業員数が  150人、事業計画期間5年の企業の場合
    150人(従業員数)×5%(初年度1.0%+事業計画期間年率平均1.5%×5年)=12.75人
    ⇒13人以上の増員が必要となります。
  • 予見できない大きな事業環境の変化に直面するなどの正当な理由なく、事業計画期間終了時点において、従業員数を年率平均5%以上(初年度は1.0%)増加させることができなかった場合、通常枠の従業員規模ごとの補助上限額との差額分について補助金を返還する必要があります。

 

 

要件に該当する場合は積極的な活用の検討を

ここまで事業再構築補助金の第6回公募でも継続されている大規模賃金引上枠について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。

この申請類型は、政府の「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」における「分配戦略」の1つとして、多数の従業員に対する賃上げを率先して行い、かつ人員増強により生産性向上に取り組みつつ事業再構築に挑む中小企業等を強く後押しするものです。事業構築補助金が目的とする日本経済の構造転換は、まさにこのような事業者の積極的な取組にかかっていると言っても過言ではないでしょう。もちろん、大規模賃金引上枠の補助事業による事業再構築は、事業者が優位性を発揮できる新たな市場へ参入し持続的な成長を期する絶好の機会でもあります。

そこで是非、大規模賃金引上枠の要件に該当する事業者にあっては、これを活用した事業再構築の断行により、さらなる発展・拡大に挑戦してみてはいかがでしょうか。

関連記事