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ものづくり補助金回復型賃上げ・雇用拡大枠の新設ー逆境から革新的取組に挑戦ー

ものづくり補助金回復型賃上げ・雇用拡大枠の新設ー逆境から革新的取組に挑戦ー

ものづくり補助金では、10次締切分の公募から新しい申請類型として「回復型賃上げ・雇用拡大枠」が新設されました。

ものづくり補助金は、革新性ある新しい製品やサービスの開発、または生産プロセス・サービス提供方法の改善への取組に役立てるために活用できる補助金で、多くの事業者の方々において検討の対象となっています。

この記事では、新しく設けられた回復型賃上げ・雇用拡大枠の内容について解説しています。厳しい業況の中にあっても賃上げ等に取り組んでおられる事業者の皆様に役立てば幸いです。

 

 

 

ものづくり補助金回復型賃上げ・雇用拡大枠の概要

回復型賃上げ・雇用拡大枠の補助内容

新設された回復型賃上げ・雇用拡大枠の補助内容は次のような内容になっています。

項 目要 件
概要業況が厳しいながら賃上げ・雇用拡大に取り組む事業者が行う、革新的な製品・サービス開発または生産プロセス・サービス提供方法の改善必要な設備・システム投資等を支援
補助金額【従業員数5人以下】     100万円〜750万円

【従業員数6人〜20人】  100万円〜1,000万円

【従業員数21人以上】  100万円〜1,250万円

補助率2/3
設備投資単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要
補助対象経費機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費

「通常枠」と同様に、小規模事業者も補助の対象となっています。また補助率については、原則1/2の「通常枠」に対して2/3と手厚くなっており、苦境の中にあっても新たな取組に挑戦する事業者を強く支援する姿勢がうかがえます。

なお、回復型賃上げ・雇用拡大枠での応募申請は、当該枠で不採択の場合、通常枠で再審査されます。ただし、再審査の結果、通常枠で採択された場合は、通常枠での補助率等の条件が適用されます。

 

回復型賃上げ・雇用拡大枠の補助要件

回復型賃上げ・雇用拡大枠の補助事業は、交付決定日から10ヶ月以内(ただし、採択発表日から12ヶ月後の日まで)の補助事業実施期間内に、発注、納入、検収、支払等の全ての事業の手続きを完了させなければなりません。原則として補助事業実施期間の延長はありませんから、実行可能なスケジュールで事業計画を策定するよう留意しましょう。

また「基本要件」として、次の3要件を全て満たす3〜5年の事業計画を策定することが求められています。

  • 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均5%以上増加。
    (被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
    ※ 給与支給総額とは、全従業員(非常勤を含む)および役員に支払った給与等(給料、賃金、賞与および役員報酬等は含み、福利厚生費、法定福利費や退職金は除く)をいいます。
  • 事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする。
  • 事業計画期間において、事業者全体の付加価値額(営業利益、人件費、減価償却費を足した額)を年率平均3%以上増加。

 

回復型賃上げ・雇用拡大枠特有の要件

さらに回復型賃上げ・雇用拡大枠については、「基本要件」に加えて、以下の(1)〜(3)全ての要件に該当するものである必要があります。

  • 応募締切時点の前年度の事業年度の課税所得がゼロであること。
  • この要件を満たすことを示すため、課税所得の状況を示す確定申告書類を申請時の添付書類として提出する必要があります。
    具体的には、法人の場合は「確定申告書別表一(一)の控え」および「確定申告書別表四の控え」、個人事業主の場合は「確定申告書第一表の控え」(いずれの場合も「e-Tax」で申告している場合には加えて「受信通知」)が必要となります。
  • 常時使用する従業員がいること。
  • 補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点での給与支給総額、事業場内最低賃金の増加目標を達成すること。

 

事業計画で定めた目標未達に関する注意点

回復型賃上げ・雇用拡大枠以外の申請類型においては、補助事業実施期間に新型コロナウイルス感染症の影響を受けることを想定して、原則年率平均1.5%以上の賃上げ、および年率平均3%以上の事業全体の付加価値額増加の目標を据え置きし、その翌年度から3〜5年の間にこの目標値を達成する計画とすることが可能です。しかし、回復型賃上げ・雇用拡大枠については、この据え置きは認められていません。

むしろ、回復型賃上げ・雇用拡大枠は、従業員に対する賃上げ等を前提とした優遇制度であることから、目標未達についてはより厳しい措置が定められています。

この枠で採択された事業者が補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、給与支給総額または事業場内最低賃金の増加目標のいずれか一方でも達成できていない場合には、補助金交付額の全額の返還が求められることとなっています。

ただし、天災など事業者の責めに負わない理由がある場合は、上記の補助金返還は求められません。

また、給与支給総額を用いることが適切ではないと解される特別な事情がある場合には、給与支給総額増加率に代えて、1人当たり賃金の増加率を用いることが認められます。

これらの点によく留意し、策定した数値目標を確実に達成できるように補助事業を進めましょう。

 

 

革新的な取組により回復の途を!

ここまで、ものづくり補助金に新設された回復型賃上げ・雇用拡大枠の内容および要件について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。

いわゆる「分配戦略」を政府が進めようとしていることもあり、中小企業等は今後複数年にわたり賃上げ等の制度変更に直面することが想定されています。もとより業況が厳しい事業者にとっては、その原資の確保は非常に困難です。

そんな中、革新的で新たな製品・サービスの開発や事業プロセスの改善の取組は、業況の改善に向けて有効な方策・戦略の1つとして考えられます。ただ、その取組に必要となる費用も相応に高額であり、全てを自社で賄うのはやはり難しい課題です。

そこで、業況を回復するための革新的な取組にものづくり補助金が活用できます。とりわけ回復型賃上げ・雇用拡大枠では補助率が優遇されていますので、同じ自己資金でより大きな挑戦が可能となります。

 

この機会に、ものづくり補助金回復型賃上げ・雇用拡大枠を活用した革新的な事業の計画を検討してみてはいかがでしょうか。

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