ものづくり補助金デジタル枠は事業躍進のチャンス!(第4回)ーデジタル枠特有の要件を解説ー
ものづくり補助金デジタル枠は事業躍進のチャンス!(第4回)
ものづくり補助金では、10次締切分の公募から新しい申請類型として「デジタル枠」が新設されました。前回までの記事では補助内容や要件、ならびにDX推進の観点での活用例をお伝えしてきました。
この記事では、ものづくり補助金における他の申請類型とは異なるデジタル枠特有の補助対象事業要件について詳しく解説します。デジタル枠が確実に事業躍進のチャンスとなるよう、事業者様における検討やスムーズな手続きの役に立てば幸いです。
ものづくり補助金デジタル枠の補助内容
新設されたデジタル枠の補助内容は次のような内容になっています。
項 目 | 要 件 |
概要 | DX(デジタルトランスフォーメーション)に資する革新的な製品・サービス開発またはデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援 |
補助金額 | 【従業員数5人以下】 100万円〜750万円 【従業員数6人〜20人】 100万円〜1,000万円 【従業員数21人以上】 100万円〜1,250万円 |
補助率 | 2/3 |
設備投資 | 単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要 |
補助対象経費 | 機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費 |
従来からある「通常枠」と同様、小規模な事業者もきちんと補助の対象となっています。また補助率についても、原則1/2の「通常枠」に対して2/3と手厚くなっており、デジタル枠を活用したDXの取組を強く支援するスタンスがうかがえます。
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デジタル枠特有の要件
他の申請類型と共通する事項がデジタル枠にも補助対象事業の要件として求められています。補助事業実施期間内に手続きを完了すべきことや、給与支給総額増加、事業場最低賃金の水準向上、および付加価値増加を内容とする「基本要件」があります。
デジタル枠では、それらに加えて特有の要件が3つ求められていますので、以下に見ていきましょう。
補助事業の内容に関する要件
デジタル枠では、補助事業の内容が次の①または②に該当している必要があります。
同時に、単にデジタル製品の導入やアナログ・物理データの電子化にとどまり、既存の業務フローそのものの見直しを伴わないもの、および導入先企業においてそのような単なる電子化にとどまる製品・サービスの開発は、補助対象経費になりません。
① DXに資する革新的な製品・サービスの開発
② デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善
そもそも、ものづくり補助金の対象となるには革新性が求められており、例えば「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」または「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」に準拠するなどして競争力や生産性の向上に繋がる取組内容である必要があります。
この点を踏まえた上で、DX、すなわち「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」に資する、より高い付加価値を伴う革新性が要求されます。
データやデジタル技術を活用した製品またはサービスとしての革新性によって競争力や生産性の向上を可能としていても、ビジネスモデル、業務、組織、プロセス、企業文化・風土が既存通り変化せず何らの変革ももたらさないものであってはならないのです。
DXは'transformation'の字義通り「変形」「変質」を伴うものであり、DXは前述の企業における諸要素、諸活動の形や性質を変化させることにより競争上の優位性を確立するものであることを念頭に置きつつデジタル枠の活用を計画しましょう。
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DX推進指標を活用した自己診断
この要件は申請前に行わなければならない手続きの要件です。経済産業省が公開するDX推進指標を活用して、DX推進に向けた現状や課題に対する認識を共有する等の自己診断を実施するとともに、自己診断結果を応募の締切日までに独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対して提出していることが求められています。
DX推進指標を活用した自己診断
まず、自己診断の元となる「DX推進指標」は、経済産業省ウェブサイトの「産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進」で入手できます。同じページにある令和元年(2019年)7月の経済産業省による資料「『DX推進指標』とそのガイダンス」も併せて入手し、これを参考として自己診断を行います。
DX推進指標は、①DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標(「DX推進の枠組み」(定性指標)、「DX推進の取組状況」(定量指標))、および②DXを推進する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標(「ITシステム構築の仕組み」(定性指標)、「ITシステム構築の取組状況」(定量指標))によって構成されています。定性指標については、指標ごとに示されている6段階の成熟度を回答する形式で、定量指標については、自社がDXによって伸ばそうとしている定量指標を自ら選択して算出し、設定した数値目標を回答する形式です。
また、定性指標は「キークエスチョン」と「サブクエスチョン」で構成されており、キークエスチョンは経営者自ら回答することが望ましいもの、サブクエスチョンは、経営者が経営幹部、事業部門、DX部門、IT部門等と議論をしながら回答するものと想定されています。
なお、「ITシステム構築の枠組み」や「ITシステム構築の取組状況」に関しても、IT部門に任せるのではなく、経営幹部、事業部門、DX部門、IT部門等と議論しつつ、経営価値を意識しながら回答する」必要があるとされています。
自己診断結果の提出実際に提出するための「自己診断フォーマット」のExcelファイルは、IPAの「DX推進指標自己診断結果入力サイト」で入手することができます。このフォーマットに自己診断結果を入力します。
そして、提出に当たってはIPAの「DX推進ポータル」を利用し、入力済みの自己診断フォーマットをアップロードする方法で行います。
※ 自己診断結果提出に当たりDX推進ポータルにログインする際は、ものづくり補助金の申請時と同じGビズIDプライムアカウントを使用する必要があります。
「SECURITY ACTION」の宣言
この要件も申請前に行わなければならない手続きの要件です。IPAが実施する「SECURITY ACTION」の「★ 一つ星」または「★★ 二つ星」いずれかの宣言を行なっていることが求められています。
SECURITY ACTIONは、IPAが個別的に中小企業の情報セキュリティ対策状況等を認定するものではなく、中小企業自らが情報セキュリティ対策に取組むことを自己宣言する制度です。
情報セキュリティ対策への取組状況は各企業によって異なります。そこで、まずは「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」を参考に、取組目標を決めます。「★ 一つ星」ロゴマークを使用するには、同ガイドライン付録の「情報セキュリティ5か条」に取り組めている必要があります。また、「★★ 二つ星」ロゴマークを使用するには、同ガイドライン付録の「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」で自社の状況を把握した上で、情報セキュリティ基本方針を定め、外部に公開する必要があります。
そして、「SECURITY ACTION自己宣言サイト」において、自社の取組目標に応じて「★ 一つ星」または「★★ 二つ星」いずれかの宣言を行います。
複雑なようでそうでもない要件を粛々とクリア!
この記事では、ものづくり補助金において、デジタル枠にのみ求められる特有の要件について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
デジタル枠はDX推進へ向けた取組への支援であるとはいえ、日常業務に忙殺される中、DXや情報セキュリティ対策につき詳細に調べ、漏れなく対応するのは現実的に難しいものです。DX推進についてはあまり進捗しておらず、全社的な情報セキュリティ対策についても遅れを取っているという現状の企業は決して少なくないでしょう。
今回ご案内した、経済産業省が示すDX推進指標も、IPAが示す情報セキュリティ対策ガイドラインも、一見すると確かに複雑で、しかも高いハードルが課せられているかのように感じられるかもしれません。しかし、重要視されているのは、DX推進を進めるために自社の現状把握と目標設定を行うことです。したがって、これらの要件を満たすに当たっては、参考情報を基に粛々と進めればよいものとして捉えるのが妥当と考えられます。
いかに優れた補助事業にデジタル枠を活用するかが最も肝要です。近時の全般的に厳しい経済環境の中、DXに役立つ新しく革新的な取組に向けた事業者の皆様の検討に、これまでの記事が役立つことを願ってやみません。
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