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ものづくり補助金デジタル枠は事業躍進のチャンス!(第3回)ー活用例をご紹介ー

ものづくり補助金デジタル枠は事業躍進のチャンス!(第3回)ー活用例をご紹介ー

ものづくり補助金では、10次締切分の公募から新しい申請類型として「デジタル枠」が新設されました。前回の記事では、活用例の1つとして、DX時代におけるECサイトの構築等についてご案内しました。

この記事では、ものづくり補助金デジタル枠を実際の事業躍進にどう役立てられるか、別の活用例をご紹介します。申請を検討している事業者の皆様に役立てば幸いです。

 

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ものづくり補助金デジタル枠の概要

デジタル枠の補助内容

新設されたデジタル枠の補助内容は次のような内容になっています。

項 目要 件
概要DX(デジタルトランスフォーメーション)に資する革新的な製品・サービス開発またはデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援
補助金額【従業員数5人以下】     100万円〜750万円

【従業員数6人〜20人】  100万円〜1,000万円

【従業員数21人以上】  100万円〜1,250万円

補助率2/3
設備投資単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要
補助対象経費機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費

従来からある「通常枠」と同様、小規模な事業者もきちんと補助の対象となっています。また補助率についても、原則1/2の「通常枠」に対して2/3と手厚くなっており、デジタル枠を活用したDXの取組を強く支援するスタンスがうかがえます。

 

デジタル枠の補助要件

デジタル枠の補助事業は、交付決定日から10ヶ月以内(ただし、採択発表日から12ヶ月後の日まで)の補助事業実施期間内に、発注、納入、検収、支払等の全ての事業の手続きを完了させなければなりません。原則として補助事業実施期間の延長はありませんから、実行可能なスケジュールで事業計画を策定するよう留意しましょう。

また「基本要件」として、次の3要件を全て満たす3〜5年の事業計画を策定することが求められています。

  • 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均5%以上増加。
    (被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
  • 事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする。
  • 事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加。

デジタル枠特有の要件

さらにデジタル枠については、「基本要件」に加えて、以下の(1)〜(3)全ての要件に該当するものである必要があります。

  • 次の①または②に該当する事業であること。
  • DXに資する革新的な製品・サービスの開発
  • デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善
  • 経済産業省が公開するDX推進指標を活用して、DX推進に向けた現状や課題に対する認識を共有する等の自己診断を実施するとともに、自己診断結果を応募締切日までに独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対して提出していること。
  • IPAが実施する「SECURITY ACTION」の「★ 一つ星」または「★★ 二つ星」いずれかの宣言を行なっていること。

これら(1)〜(3)のデジタル枠特有の要件については、別の記事で取り上げ詳しく解説します。

 

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こんなケースで活用できるデジタル枠!

現行システム見直しで業務革新

ものづくり補助金デジタル枠は、現在利用している情報システムを見直し刷新する取組に活用することもできます。その場合もDX推進の観点を取り入れた事業の計画が有用です。

なぜ現行システムを見直すのか-「2025年の崖」-

IT技術を活用した業務システムは、今や私たちの日常業務、ひいては事業に不可欠なものです。しかし、多くの既存システムは、いわゆる「レガシーシステム」となっています。レガシーシステムにおいては、技術面の老朽化、度重なるメンテナンスや改修による複雑化、保守・運用できる人材の減少により、自社システムの中身が分からなくなる「ブラックボックス化」が起きています。

日本では世界に先駆けて情報システム化による競争力向上が達成されたため、日本企業は多くのデータや情報資産を保有しているにもかかわらず、開発の過程において企業全体での最適化よりも各事業・各業務としての「個別最適化」を優先した結果、多数の情報システムが孤立してレガシー化し、システム相互のデータや情報資産を共有した連携活用は困難になっています。

一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会による調査によれば、2016年度には既に4年連続で日本企業のIT関連予算のうち約80%が現行ビジネスの維持・運営に割り当てられており、これにはレガシーシステムを利用し続けるコストも含まれています。言い換えれば、ビジネスの新しい施策展開に振り当てられる資源量は非常に限定的です。この状況を放置した場合、今後ますます維持・保守コストが高騰し、本来は不必要な費用を支払い続ける「技術的負債」の増大が見込まれます。また前述の通り、既存システムを維持・保守できる人材が枯渇し、セキュリティ上のリスクが高まることも懸念されています。

 

 

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このように、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムを残し続けた場合、ハードウェア、ソフトウェアともに、重要製品の製造中止やサポート終了が起こることよって、現行機能の維持そのものが困難になります。そうすると、莫大な費用を要する情報システムの全面再構築に追い込まれたり、事業活動のコスト上昇、サービスレベルの低下といった極めて深刻な状況に陥る危険性があります。

IPAのまとめによれば、2025年までに予想されるこのようなリスクの高まりに伴う経済損失は、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)に上る可能性があると指摘されています。

この一連の危機が「2025年の崖」と呼ばれています。この崖は事業者にとって、このまま現行システムの刷新から目を背け続けてしまうと、価値のあるデータが爆発的に増加している好機が訪れているにもかかわらず、これを活用し切れずにDXを実現できず、デジタル競争の敗者となる危険が迫りつつあることを意味します。

では、どうすればよいのでしょうか。

 

DX推進のための経営のあり方・仕組み

まず、DX推進は将来的な成長や競争力強化を目的とする経営上の問題であるという明確な位置付けが必要です。DXは新たなデジタル技術の活用のみを意味せず、これを手段として新たなビジネスモデルを創出し、あるいは柔軟に改変する取組だからです。多くの経営層はDXの必要性を理解しているものの関与が薄く、事業変革のために既存システムを刷新する判断を行う企業はまだ少数にとどまっています。バラバラに利用されているシステムの全体最適化には業務自体の見直しが求められるため現場サイドの大きな抵抗が想定されるところ、これを押し切った決断を可能とできるのは、経営層によるDX推進への強い関与なのです。

また、経営層が各事業部門に対して、データやデジタル技術を新たなビジネスモデルを構築する取組について新しい挑戦を促し、それを継続できる環境を整える必要があります。具体的には、①各事業部門において新たな挑戦を積極的に行なっていく思考様式が醸成される仕組みを構築し、②経営戦略やビジョンの実現を念頭に、それを具現化する各事業部門におけるデータやデジタル技術の活用の取組を推進・サポートするDX推進部門を設置するなど必要な体制を整え、③DX実行のために必要な人材の育成や、社外人材の獲得や社外連携も含め人材確保に向けた取組を行わなければなりません。

そして、DX推進のための投資等の意思決定において、コストだけでなく事業に与えるプラスの影響を勘案して判断する一方、確実な収益性を求め過ぎることで挑戦を阻害せず、終局的には、DXが実現できず、デジタル化する市場から排除されるリスクを勘案する必要があります。

このように、まずはDX推進を実務レベルの技術的課題にとどめて捉えるのではなく、経営上の課題として正しく位置付け、適切な手当を施すことが求められます。

 

 

基盤となるITシステムの構築

DXの実行に際してはまず、各事業部門におけるデータやデジタル技術の戦略的な活用を可能とする基盤と、それらを相互に連携する社内横断的なITシステムを構築するための組織や役割分担を整えます。

また、全社的なITシステム構築に当たっては、既存のITシステムとの円滑な連携を確保しつつ、事業部門ごとの個別最適ではなく全社最適となるよう、複雑化・ブラックボックス化させないための組織的管理体制・ガバナンスが望まれます。そうして、例えば付き合いのあるIT企業の提案を丸呑みしたり丸投げしたりすることなく、自社においてシステム連携基盤の企画や要件定義を行う必要があります。

さらに、IT部門ではなく各事業部門が主導的にDXで実現したい事業企画・業務企画を自ら明確にした上で、自社のDXに適した技術面を含めた提案をIT企業から集め、それらを取捨選択した結果を踏まえて各事業部門自らが要件定義を行い、完成までの責任を担うことが求められます。

そして、IT資産の現状を分析・評価し、迅速に変革できるようにするべき事業領域に適しているか、全社最適となる構成になっているか、他社との競争領域へ重点的に資源配分しているか、廃棄する必要はないか、将来的な技術的負債の低減に繋がっていくかといった観点によりIT資産を仕分け、どのようなITシステムに移行するべきか計画を進めます。

DXを通じて目指す姿

DXを通じて現行システムの見直し・刷新を実行すると、保有している情報資産を有効に活用できるようになり、資源配分の面でも、新たなデジタル技術の活用による迅速なビジネスモデル変革に充てることが可能になります。

これにより、顧客や市場の変化に対して素早く柔軟に対応しつつ、先進的な技術を適切な開発手法を用いて取り入れ、いち早く新たな製品、サービス等を市場展開し、競争力を向上させられるようになるでしょう。

こうして、現行システムの見直しによる業務革新の結果、デジタル技術を駆使する「デジタル企業」となるのです。

 

 

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現行システム見直しによりDXを推進!

ここまで、ものづくり補助金デジタル枠の内容、および活用例として現行システムの見直しについて解説してきましたがいかがだったでしょうか。

全社的なシステム見直しの理想を追い求めてしまうと著しく高額な予算が必要となり、決して現実的ではありません。しかし、「レガシー」と化した情報システムを放置し続けることによる技術的負債の高騰については既述の通りです。

もっとも、利用している情報システムの一部ではあっても、将来的な標準化に対応できるよう見直すことには十二分の価値があります。これを機会に、ものづくり補助金を利用したシステム刷新を検討してみてはいかがでしょうか。

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